核融合反応

東日本大震災の原発事故以来、日本、いや、世界中で新しいエネルギー開発が急務となっている。
二次電池の分野は前のページで取り上げたが、ここでは核融合について触れてみたいと思う。
現在の原発による発電のメカニズムは、核分裂反応で発生する凄まじいエネルギーでタービンを回し、タービンの摩擦熱を電気として利用している。
ご存じのように核分裂はひとたびメルトダウンを起こせば、とんでもない大事故へと暴走する。
核融合反応は、安全面でも核分裂より安全性が高いとされており、何よりも無限に近いエネルギー供給が可能となり、もし実現すれば夢の発電システムとなることは間違いない。

核融合反応についてわかりづらいという人もいようかと思うので、少し説明したい。
一番わかりやすいのは、太陽はなぜ燃え続けることができるかというと、太陽内部で核融合を起こしている為、莫大なエネルギーを生み出しているのである。
そのため、核融合の研究は「地球に太陽を作る」とも言われている所以である。

核融合の最大の特徴は、少量の燃料で膨大なエネルギーを作り出す事ができ、さらに核分裂と違って暴走する危険が低く、万一の事態でコントロールしやすいという利点だ。

●核分裂との違い
現在、原発による発電は核分裂の際に出るエネルギーを取り出しているわけだが、核分裂はウランやプルトニウムなどの重い原子核を利用している。
重い原子核が中性子を吸収し、軽い原子核に分裂する際にエネルギーが発生する仕組みだ。

一方、核融合反応は、重水素と三重水素の原子核を融合させ、ヘリウムと中性子を作り出す。
核融合反応後のヘリウムと中性子は、反応前の重水素と三重水素より質量が軽く、この質量差がエネルギーとして放出される仕組みだ。
また、燃料として使用する重水素と三重水素は、比較的豊富にある資源で、しかも少量の資源で膨大なエネルギーを作り出す事ができるので、そこが最大のメリットとなる。

●現在の進捗状況
現在、核融合反応の研究は世界各地で行われ、しのぎを削っている。
日本ではトヨタと浜松ホトニクスによる共同買う初と、神島化学工業である。
トヨタと浜松ホトニクスによる方法と、神島化学とでは、反応までのプロセスが双方ともにレーザーを使うという点で一致している。
問題は、レーザー照射技術にある。
世界中の研究者たちは、いかに効率よくレーザー照射を確立させるか、ここが重要なポイントとなっているのだ。
これまでの核融合の方法は、重水素と三重水素を凄まじい速度で衝突させるという案が有力だった。
しかし、この方法では衝突した際にどこに吹っ飛んでしまうかわからず、なかなか思うようにいかない。
そこで、小さな燃料を的にして、レーザービームを高速で照射するという方法が考案された。
この方法の課題は、電気光変換効率をいかに上げるかが最大の難問となっていた。
これは、高出力レーザーの技術が確立されていなかった為だ。
というのも、核融合反応を効率よく反応させるには、高出力のレーザー照射を一日に数回程度しか思萎えず、これでは実用化まではほど遠いいものだった。
この難問を、光産業創成大学院大学の研究グループは見事にクリアしたのだ。
同大学では、トヨタと浜松ホトニクスとの共同研究により一日で照射できる回数を格段に向上させる事に成功したものである。
また、神島化学でも、同様の研究が行われている。
核融合反応までのプロセスはトヨタ・浜松ホトニクスと同様で、狭い範囲の重水素の的をめがけ、レーザービームを照射するというやり方である。
同社は、2020年~2030年の実用化をメドに現在開発に取り組んでいるところだ。